識名園


著者:リチャード・パーキンス
撮影日:2025年07月13日
住所:〒902-0072 沖縄県那覇市
真地421−7
入場料:大人 400円・(団体)320円|
中学生以下 200円・(団体)160円



日本には数多くの日本庭園があります。その中でも、日本庭園文化が色濃く残る地域として京都府は広く知られています。しかし、名園は全国各地に点在していて、それぞれに独自の魅力があります。その1つが、沖縄県にある「識名園」です。琉球王国(現在の沖縄県)の歴史と南国情緒を感じられるこの庭園は、日本本土の日本庭園とは一味異なった趣を楽しめます。

識名園は1799年に竣工した庭園です。琉球王国の第二尚氏王統、第15代尚温王の時代に造園されたと考えられています。この庭園は、琉球王家の別邸として造られ、王族の保養の場であると同時に、中国皇帝の使者である冊封使(さっぽうし)を持て成す迎賓の場としても利用されました。約41,997平方メートルの広さを誇るこの庭園は、2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一部として世界遺産に登録されています。識名園は、池泉回遊式(中央の池を歩道が囲む様式)庭園で、池を中心に園路を巡りながら鑑賞できるのが特徴です。庭園の中心にある「心字池(しんじいけ)」の周囲を歩きながら、沖縄県の伝統家屋と日本庭園が美しく調和した景観を鑑賞することができます。

識名園に足を踏み入れると、まず目の前に広がるのは、まるで熱帯雨林に迷い込んだかのような景色です。歩道の両側には数多くの大木が聳え立ち、沖縄県の強い日差しを遮ってくれます。園内にはどこか神秘的な空気が漂い、まるで異世界に入り込んだような感覚を味わえます。少し進むと、木々に囲まれた空間を抜け、今度は日本庭園らしい落ち着いた景観が広がります。庭園そのものは伝統的な造りですが、熱帯の森のような空間から庭園へと移り変わる構成は、他の日本庭園では殆ど見られない特徴です。こうした独特の景観の変化も、識名園の大きな魅力の1つと言えるでしょう。

この庭園の特徴のもう1つが、園内で見られる琉球建築です。園内には沖縄県の伝統家屋が建てられ、外観を鑑賞できるだけでなく、内部まで見学することができます。この建築は、日本本土の日本建築とは異なる独特の造りが特徴です。まず目を引くのが、赤瓦の屋根です。沖縄県では古くから赤瓦が用いられていて、美しい見た目だけでなく、遮熱性や耐久性にも優れています。台風の多い沖縄県の気候に適応した構造も特徴です。また、深い軒が設けられているため、強い日差しや雨を防ぎながら、室内を涼しく保つ役割も果たしています。更に、開口部(窓・出入り口・換気口など)が広く設計されていて、風通しの良い開放的な空間です。1年を通して温暖な沖縄県の気候に合わせ、快適に暮らせる工夫が随所に施されているのです。識名園にある家屋は、上流階級の格式で、総面積は525平方メートルにも及びます。沖縄県では重要な歴史的建築物の1つで、内部まで自由に見学できるのはとても貴重な機会です。

沖縄県は、日本や中国の文化を取り入れながら、独自の琉球文化を発展させてきた地域です。識名園にも、この独特の文化が色濃く反映されています。例えば、石橋や六角堂と呼ばれる六角形の建物には、中国風の意匠(デザイン)が取り入れられています。その一方で、前述の池泉回遊式庭園は、日本庭園を代表する様式の1つです。また、園内に建てられている琉球建築は、沖縄県らしさを象徴する存在です。日本庭園には様々な様式がありますが、日本・中国・琉球という3つの文化が融合した庭園は、日本国内でもとても珍しい存在です。識名園は、多文化が調和した国際色豊かな庭園と言えるでしょう。

前述の通り、琉球王国時代に造られた識名園は、中国・日本・琉球の文化が融合した独特の様式を持つ庭園です。世界的にも珍しい景観が見られることでも知られ、その美しさは多くの人々を魅了しています。園内では、池泉回遊式庭園ならではの美しい眺めを楽しみながら、琉球王国の歴史や文化に触れることができます。沖縄県を訪れる時には、是非識名園にも足を運び、この歴史ある庭園をじっくりと鑑賞してみて下さい。





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