著者:リチャード・パーキンス
撮影日:2025年08月24日・2026年03月19日
住所:〒657-0852 兵庫県神戸市灘区大石南町1丁目
日本には、「日本酒」という伝統的な酒があります。日本人の主食である米を原料とした酒です。現在の日本酒と同じものかどうかは明らかではありませんが、縄文時代(紀元前1万3千~紀元前4世紀頃)には、米を使用した酒が日本で造られていたと言われています。そのため、日本の酒造りにはとても長い歴史があると言えます。また、日本には有数の日本酒の生産地がいくつかあります。その1つが兵庫県です。特に、兵庫県神戸市灘区は、昔から酒造りが盛んな地域でした。現在も、日本酒を醸造する酒蔵がいくつかあります。その1つが「沢の鶴」です。
現在、沢の鶴は別の場所で日本酒を造っていますが、かつて酒造りに使用されていた酒蔵を資料館として公開しています。これが「神戸・灘 昔の酒蔵 沢の鶴資料館」です。昭和53年(1978年)11月に開館したこの資料館の最大の見所は、何と言っても、建物そのものです。この建物は、江戸時代(1603〜1868年)末期に建てられた木造の蔵で、建てられてから170年以上が経っています。釘を使用せずに木材を組み合わせる、「指物」と呼ばれる日本の伝統技法が用いられています。
残念ながら、平成7年(1995年)1月17日に発生した阪神・淡路大震災により、建物は崩れ落ちてしまいました。その後、耐震補強工事を含む復元工事が行われ、平成11年(1999年)の春に再び開館しました。
ここでは、昔の酒造りに使用されていた建物を実際に見学できるため、酒造りの歴史を身近に感じることができます。また、日本の伝統的な建物には、窓が少なく、外からの光がほとんど入らないものも多くあります。当時の職人たちが、このような暗い酒蔵の中で酒造りに励んでいた様子を想像しながら見学することができます。日本の伝統的な建物が年々減少している中、実際に伝統的な木造の酒蔵の中に入り、間近で見学できるのは貴重な経験です。沢の鶴資料館では、昔の酒蔵の建物そのものを楽しみながら、日本の伝統的な酒造りの文化に触れることができます。
神戸・灘 昔の酒蔵 沢の鶴資料館では、沢の鶴がどのように日本酒を造ってきたのかを知ることができます。模型の他、実際に使用されていた木樽や酒造りの道具など、様々な資料が展示されています。
最初の部屋では、沢の鶴の歴史を紹介する短い動画が上映されています。その後、いくつかの小さな木樽を見ながら、日本酒造りの最初の工程について学びます。この工程では、酒米(さかまい)と呼ばれる、日本酒造りに適した米を蒸し、次の工程に適した状態にします。更に奥の部屋へ進むと、大きな木樽が展示されています。沢山の木樽が並んでいて、その数の多さに驚かされます。これらの木樽を使用し、麹、蒸米(むしまい・蒸した米)、水を3回に分けて加え、醪(もろみ)と呼ばれる液体を仕込んでいました。
その後、階段で2階に上がります。この階には、主に日本酒造りに使用される道具が展示されています。日本酒の仕込みに欠かせない道具から、日本酒を飲む時に使用される徳利まで、日本酒に関連する様々なものを見ることができます。また、船の模型も展示されていて、昔、日本酒がどのように日本各地へ運ばれていたのかが説明されています。日本酒造りの奥深さを感じられるだけでなく、沢の鶴の日本酒を実際に試飲してみたくなるような、興味深い展示です。
2階の奥に進むと、沢の鶴の瓶のラベルや、当時使用されていた広告なども展示されています。また、麹室(こうじむろ)と呼ばれる部屋もあります。この部屋では、蒸米に麹菌を振りかけます。麹菌の働きによって蒸米の澱粉(でんぷん)が糖化され、ブドウ糖などの糖に分解されることで、アルコール発酵が進みます。麹菌が働きやすいよう、この部屋は約35℃に保たれています。暑い中で日本酒を造るのは大変そうに思えますが、伝統的には秋から春にかけて日本酒が造られることが多いため、寒い日にこの部屋で仕事をするのは、却って快適だと感じる職人もいたのかも知れません。
最後は1階に下り、沢の鶴の土産店を通ります。ここでは、沢の鶴の日本酒を購入できるだけでなく、少量ですが、試飲もできます。沢の鶴が昔どのように日本酒を造っていたのかを学んでから日本酒を飲むと、普段よりも美味しく感じられ、日本酒の世界をもっと知りたくなるでしょう。
決して広い資料館ではありませんが、神戸・灘 昔の酒蔵 沢の鶴資料館の展示は充実していて、日本酒造りの工程がとても分かりやすく紹介されています。前述の通り、この資料館の建物は、年々減少している日本の伝統的な木造建築の1つで、実際に近くで見学できるのは貴重な経験です。建物を見るためだけでも、訪れる価値があります。兵庫県を訪れる機会があれば、是非神戸市に立ち寄り、日本酒について学びに、神戸・灘 昔の酒蔵 沢の鶴資料館を訪れてみてください。
これが日本酒造りに使用される酒米です。
昔は、このように収穫した米を運んでいました。
これは、竜吐水(りゅうどすい)という、火事を消すために江戸時代(1603~1868年)に使用されていた消火ポンプです。
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