著者:リチャード・パーキンス
撮影日:2025年05月13日
住所:〒766-0001 香川県
仲多度郡琴平町乙1241
入場料:大人 500円|中学生・
高校生 300円|小学生 200円
日本には様々な伝統芸能が存在しています。その1つは、伝統的な芝居である歌舞伎です。慶長8年(1603年)に始まったこの伝統芸能は、京都府発祥の物です。そのため、特に日本史が好きな人は、歌舞伎を見るとすれば、京都府の芝居小屋(歌舞伎座)で見るのが一番だと考えているのではないでしょうか。京都府の芝居小屋は素晴らしい物でありながらも、歴史があり、訪れる甲斐のある芝居小屋が他にもあります。実は、現存する芝居小屋の中で最も歴史があるのは京都府にあるわけではなく、香川県にあります。それは、「旧金毘羅大芝居(金丸座)」という豪華な芝居小屋です。
旧金毘羅大芝居(金丸座)は天保6年(1835年)に建てられ、昭和45年(1970年)に国の重要文化財として指定されました。昭和60年(1985年)から毎年歌舞伎がここで公演されていて、愛称のように「四国こんぴら歌舞伎大芝居」とも呼ばれています。歌舞伎が公演されていない日は、観客が座る場所だけでなく、普段一般人が見ることのない裏の部屋も自由に見学できます。299坪の広さで、2階建てであるこの建物は、1歩踏み入れるだけで江戸時代(1603〜1868年)にタイムスリップしたかのような気分になります。
この芝居小屋は、歴史的な建物だけではありません。平成15年(2003年)に修復工事が行われ、建てられた当時の状態に甦りました。そのため、他の日本の芝居小屋にはない特徴をいくつか誇っています。その1つは、観客の席です。どの芝居小屋にも畳の席がある程度設けられているようですが、旧金毘羅大芝居(金丸座)の1階にはどこまでも広がっているかのように見えるほど広漠とした畳が敷かれています。これは他では中々見られない光景です。この階だけは、座椅子などが用意されていません。観客は座布団の上に座り、歌舞伎を鑑賞します。建物の作りに限らず、舞台の見方も昔ながらの形です。
もう1つの芝居小屋で普段見られない珍しい物は「空井戸(からいど)」です。芝居小屋に「花道」と呼ばれているカ所が設けられていて、この細長い通路を歌舞伎役者が通り、表舞台に着きます。旧金毘羅大芝居(金丸座)の花道の横に空井戸があり、これは独特な仕掛けです。切り穴で、エレベーターのような昇降装置です。ここから歌舞伎役者が舞台に上がり、現れる演出ができます。空井戸は多くの芝居小屋に設けられていたものの、現在はここにしか残っていない貴重な物です。
旧金毘羅大芝居(金丸座)の天井を見上げると、独特な形をしていることが分かります。これは珍しくなった「ブドウ棚」と「かけすじ」と呼ばれている物です。改修工事の時に復元され、演出に合わせて使用されています。ここから紙製の花を散らし、花吹雪を再現します。この場所で、歌舞伎を鑑賞する時、芝居により、こういった楽しみがあります。自分も芝居に参加しているかのような気分で歌舞伎を鑑賞でき、格別な体験になるでしょう。
上記の通り、見学の時は、芝居小屋のどの部屋も見ることができます。その1カ所は「奈落」と呼ばれている地下室です。舞台や花道の真下にある通路で、歌舞伎役者が通ります。歌舞伎役者が着替える部屋や休憩をする部屋なども見られます。表舞台や観客の席がある大広間はそうですが、奥の部屋も大きいです。この部屋にも畳が敷かれていて、どれも和室です。大勢の役者が一斉に舞台の準備をするのが想像できる、奇麗に整備されている部屋です。歌舞伎の魅力は勿論、畳の魅力もよく伝わる部屋で、これを見学してから日本の伝統的な建物に惹かれて興味を持つようになった人が多いのではないでしょうか。
歌舞伎を見たことがない、この伝統芸能に乏しい人も旧金毘羅大芝居(金丸座)を楽しく見学できます。このような歴史的な建物が減少していて、数分見学するだけで誰もが心を奪われ、強い感銘を受けるのではないでしょうか。香川県の有名な「金刀比羅宮」という神社の近くにあるこの芝居小屋は、とても訪れやすい場所に位置しています。香川県へ遊びに来る時は、旧金毘羅大芝居(金丸座)を訪れ、日本の伝統芸能である歌舞伎の世界に飛び込んでみて下さい。
これは「下足札(げそくふだ)」と呼ばれる物です。かつて芝居小屋などで履き物を脱いだ時、客に渡される番号札です。
「ブドウ棚」と「かけすじ」が付いている天井です。
これが、表舞台の下にある「奈落」です。