著者:リチャード・パーキンス
撮影日:2025年05月17日
住所:愛媛県喜多郡内子町内子
日本は、伝統的な建物がそこまで残っていません。現在、歴史ある建物は年々減少していて、古民家が立ち並ぶ風景が珍しくなっています。しかし、限られた場所で、現在も古民家が残り、昔ながらの風景が広がる町があります。愛媛県の「内子町」には、歴史的な建物が数多く保存されていて、日本ならではの街並みを味わうことができます。
ここには、江戸時代(1603〜1868年)、明治時代(1868〜1912年)、大正時代(1912〜1926年)に建てられた何棟かの建物が残っています。取り分け目を引くのは、大正5年(1916年)に建てられた芝居小屋「内子座」です。平成27年(2015年)に国の重要文化財に指定されましたが、かつては老朽化で取り壊される恐れがありました。しかし、町民の尽力により、昭和60年(1985年)10月に復元されました。公演のない日には内部を見学することができ、過去には映画館や商工会の事務所として利用されていたこともあります。現在では劇場としての上演だけでなく、コンサートや発表会の会場としても活用されています。
他には、大正14年(1925年)に建てられた映画館「旭館」も目を引きます。当初は「活動写真館」として開館し、昭和44年(1969年)まで長年にわたり、様々な映画が上映されていました。閉館後は家具展示場や倉庫として使用され、平成25年(2013年)には国の登録有形文化財に指定されました。残念ながら普段は見学できないようですが、イベントの時には内部を公開し、その時に見学することができます。
復元された建物の他にも、博物館として利用されている建物があります。その建物は「商いと暮らし博物館」で、薬局の店舗と家屋を再現しています。江戸時代から明治時代の商家(商人の家)が博物館として甦り、伝統的な日本家屋を見ながら大正10年(1921年)頃の商いの様子を知ることができます。人形や模型に加え、当時の言葉で録音されたセリフも流れ、生活の様子が分かりやすく再現されています。大規模な博物館ではありませんが、多くのことを学べる施設です。
内子町は、かつて和蝋燭(わろうそく)の名産地の1つでした。原料の木蝋(もくろう)が生産されていたため、和蝋燭も生産されていました。現在も生産は続いていて、専門店は数少ないものの、購入できる店があります。また、伝統家屋を活用した土産屋やカフェもあり、日本ならではの雰囲気の中で買い物や休憩を楽しめます。普段は見られない伝統的建築の内部も、ゆっくり見学できます。
日本では、建物を定期的に取り壊し、新しい建物に建て替えるのが一般的です。そのため、日本の伝統的な家屋の多くが取り壊され、姿を消しています。内子町は日本の昔ながらの街並みが楽しめる観光地として知られていますが、これほど多くの歴史ある建物が1カ所に残っているのはとても珍しいことです。貴重な町並みであり、現代では殆ど見られない建物が多く残っているので、ゆっくり巡るのに相応しい場所です。公共交通機関でも簡単に訪れることができるので、是非この素晴らしい街並みを見に愛媛県へ遊びに来て下さい。
これが「商いと暮らし博物館」です。